ねぇ。
なんでまた、こんな遅くまで仕事をやっているの。
いくら人工知能が発達しても。
いろいろできる風になっても。
アイディアが浮かばなくても、
机の上のカップは冷めたままだ。
時計の音だけが、大きく響いている。
夜中の十一時十七分。
冷房を入れるのを忘れていた。
黙々と考え事をして。
文章を書いて。
どうにか勝つ方法を探していた。
けれど、結論は出なかった。
少し、こうすればいいのかもしれない。
そんな方向だけは見えた。
やっぱり、勝てそうなところで勝つ。
これに尽きる。
いくら自動化しても、
人が声をかけることって、いちばん強い。
それと、勝てる場所に置く。
この二つだと思う。
少し汗をぬぐう。
耳を澄ます。
鈴虫の音が、夜に溶けていく。
真夜中、頭の中でミラーボールが回る。
光の粒が、胸の奥まで降ってくる。
もう限界かも。
ためいきではなく、
おおきく、ふかく息をついた。
胸の奥まで、夜が入りこんでくる。
静かな夜に、目を閉じる。
もう一つ、何かが浮かぶように、願いを込める。
アイディアというのは、
何かと何かの組み合わせだって、誰かが言っていた。
孫さんだったかな。
今日のアイディアに、何かをくっつける。
それで明日、良い形になるのかもしれない。
それとも、引き算をして。
そぎ落とすほうがいいのか。
アイディアで勝つのか。
それとも、集中して細かく見ることで勝つのか。
どちらも、アイディアなのかもしれない。
ぼんやりとした考えが、よぎっては待機に変わる。
よぎっては、こぼれ落ちる。
机の上のペンが、月明かりに細く光っている。
その光は、きっと新しい光だ。
まだ、名前のない朝の色。