先日紹介した「音楽ジャンルIceberg」を眺めながら、ひとつの疑問が浮かんだ。 あれだけ細分化が進んだ世界で、まだ未定義の領域は残っているのか。

結論から言うと、余裕で残っている。 なぜならジャンルとは「音」そのものではなく、「音をどう切り取るか」という視点だからだ。 視点が変われば、いつでも新しいラベルは生まれる。
そこで今回は、Icebergのさらに下層に沈めても違和感のない架空ジャンルを考えてみた。
1. glacierstep(グレイシャーステップ)
氷河がゆっくり割れる音をサンプリングした超低速ビート。 キックはほぼ存在しない。 時間の進み方が伸びるような感覚を作る。
冷たいアンビエントとハーフタイムUKベースのあいだ。 踊るというより、沈む音楽。
2. overcast pop(オーバーキャスト・ポップ)
曇り空専用のポップス。 コードはメジャーだが、どこか濁っている。 歌詞は前向きなのに、湿度が高い。
晴れ切らない感情を肯定するポップ。 アルゴリズムが拾いにくい微妙な温度帯。
3. corridor techno(コリドー・テクノ)
クラブではなく、無人の長い廊下で鳴らすテクノ。 リバーブが主役。 ビートは壁に反射してから届く。
建築と音の相互作用を前提にした設計。 箱ではなく空間そのものが楽器になる。
4. afterimage rap(残像ラップ)
言葉が意味より先に消える。 韻は踏むが、主語が曖昧。 聴き手の脳内で補完させる構造。
説明しない。 余白で殴るラップ。
5. dustcore(ダストコア)
劣化したカセットテープのノイズをビートに転用。 高音は削れ、低域は歪む。 音質の悪さが主役。
懐古ではなく、記憶の粒子を鳴らす音楽。
6. gravity house(グラビティ・ハウス)
BPMは普通。 しかし体感は重力2倍。 ベースが沈み、ハットは遅れて落ちる。
踊れるのに重い。 クラブの床が深海になる。
7. windowgaze(ウィンドウゲイズ)
Shoegazeの次。 足元ではなく、窓の外を見る音楽。 ギターは遠景、ボーカルは独白。
外界と内面のあいだに浮かぶジャンル。
8. feedback folk(フィードバック・フォーク)
アコースティックギターに意図的ハウリング。 自然音と電気ノイズを同居させる。 焚き火の前でアンプが鳴る。
プリミティブと電子の衝突。
9. soft apocalypse(ソフト・アポカリプス)
世界は終わるが、静かに。 アンビエントとゴスペル的和声。 絶望ではなく受容。
終末を穏やかに描く音楽。
10. null groove(ヌル・グルーヴ)
リズムがあるようで、ない。 グルーヴを感じるのは錯覚。 ビートを極限まで削ぎ落とす。
AI的ミニマリズムの極地。
なぜ、こんなものを考えるのか
音楽ジャンルは音の分類ではない。 それは態度の命名だ。
ShoegazeもHyperpopも、最初は誰かの視点だった。 ならば、今この瞬間に想像した言葉も、明日には本当に存在していい。
Icebergの底は、まだ見えていない。 だからこそ面白い。
あなたなら、どんなジャンルを作るだろうか。
実際作ってみた
20作ってみた。そのなかで良かったもの3つをこの記事で公開してみたのでぜひきいてみてね。