本屋で3位になっていた本と、旧友のこと——『ユダヤ人の歴史』鶴見太郎

本屋で3位になっていた本と、旧友のこと——『ユダヤ人の歴史』鶴見太郎

この本が買いたい。

息子のサッカーの送り迎えのあとに、本屋さんでふと目に留まった。鶴見太郎著『ユダヤ人の歴史』。棚のランキングで3位に並んでいた。意外と気になっている人いるんだな、と思った。

旧友のこと

旧友にユダヤ人の友達がいる。たぶんまじめなユダヤ教徒だ。でもなんだか、いつも声をかけるとほっとする。

かれからは話を少し聞いていた。イスラエルに行った話も聞いた。安息日のことも聞いた。でも、もっと詳しく知りたいなと思っていた。なんでかわからないけど、今の世の中でもう少し理解しておきたいな、と。

夕暮れの静かな書斎、窓から柔らかな光が差し込む、積まれた本、落ち着いた雰囲気、16:9

この本について

この本は、知識を増やすための「解説書」というより、理解の距離を縮めるための本だと思う。

『ユダヤ人の歴史』(中公新書)は、3000年という長い時間を、一直線の物語としてではなく「組み合わせの歴史」として描く。王国の成立と滅亡、ディアスポラ、宗教と法、異文化との共存と衝突。どれも単独ではなく、常に他者との関係の中で形づくられてきたことを、淡々と、しかし解像度高く追っていく構成だ。

古代王国建設から民族離散、ペルシア・ローマ・スペイン・オスマン帝国下の繁栄、東欧での迫害、ナチによる絶滅計画、ソ連・アメリカへの適応、イスラエル建国、中東戦争まで。善悪や評価を急がず、まず構造を見せる書き方が、この本の強さだと思う。

判断する前に、ちゃんと知りたい

旧友との会話は断片的だった。背景を知らないままでは、どこか表層をなぞっているだけだったのかもしれない、とこの本の紹介文を読んで思った。

今の世界は、対立が単純化されやすい。イスラエル、ユダヤ人、宗教、暴力。言葉だけが先行し、文脈が切り落とされる。その状況で「もう少し理解しておきたい」と思う感覚は、とても健全だと思う。この本はその入口としてちょうどいい距離感を保っている。専門的すぎず、感情に寄りすぎず、しかし安易に中立を装わない。

本屋で気になっている人が意外と多かったのも、たぶん同じ理由だ。何かを主張したいからではなく、判断する前に、ちゃんと知りたい。そのための土台として、この本はかなり信頼できそうだ。

買って、ゆっくり読めばいい。急がなくていい本だと思う。

書誌情報

  • 著者:鶴見太郎
  • 出版:中公新書
  • 初版:2025年1月22日
  • 定価:1,188円(税込)
  • ISBN:978-4-12-102839-6
attrip

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