ポイントはただ一つ:売上は“ファン”ではなく“たまたま買った人”の山でできている。
1.はじめに ── 「ファン育成」だけでは伸びない理由
あなたがつい信じてしまいがちな常識は、次の3つです。
- リピーターを育てれば売上は安定する。
- コアファンを増やせばブランドが成長する。
- 競合ユーザーを奪うことが勝ち筋になる。
Duplication of Purchase(以下 DoP)理論は、この常識をデータでひっくり返します。
2.Duplication of Purchase 理論とは?
| 観点 | 要旨 |
|---|---|
| 定義 | 消費者は 1 ブランド専属ではなく、複数ブランドを“重複”して購入する傾向がある。 |
| 発見者 | Andrew Ehrenberg(統計学者) |
| 発展者 | Byron Sharp(マーケティング科学者) |
| 代表モデル | NBD‐ディリクレ分布モデル |
結論:売上を伸ばすには「購入者数」を増やすほうが「購入頻度」を上げるより効く。
3.よくある“勘違い”を修正するチェックリスト
| ❌ ありがち誤解 | ✅ DoP視点の正解 |
| ファンを育てることが最優先 | まずは 1回 買ってもらう人を増やす |
| ペルソナを絞り込むほど効率的 | 広いリーチ で想起を確保する |
| リピート率こそ成長ドライバー | 購入者母数 が伸びなければ頭打ちになる |
| 競合ユーザーを“奪う” | ユーザーは競合とも重複するのが普通 |
4.実務で何をすべきか?(あなたのTODO)
- 誰でも買えるブランド設計:排他的メッセージを外し、“ちょっと贅沢したい時の選択肢”として定義する。
- 広範リーチ広告:Meta/YouTube/OOHで潜在層にも常に接触。
- 体験導線の増設:サンプリング・ワンコインお試し・コラボ企画で「初回購入ハードル」を下げる。
- KPIの刷新:リピート率 → 月間新規購入者数 に置き換える。
- 記憶資産を作る:パッケージ、色、コピーを統一し“思い出されやすさ”を担保。
5.まとめ
- ライトユーザーの母集団こそが売上の源泉。
- DoP理論は「ファン神話」を否定し、新規購入者拡大を最優先に据える。
- 広告・商品・KPIをすべて“初回購入を増やす”方向に再設計せよ。
これで、あなたのブランドは「偶然でも選ばれるブランド」へシフトできます。
参考文献
- Ehrenberg, A. S. C. (1972). Repeat Buying: Facts, Theory and Applications (2nd ed.). London: Charles Griffin & Company. ISBN 978‑0852641970.
- Goodhardt, G. J., Ehrenberg, A. S. C., & Chatfield, C. (1984). “A Dirichlet Model of Brand Choice.” Journal of Marketing Research, 21(1), 1–17. https://doi.org/10.1177/002224378402100101
- Sharp, B. (2010). How Brands Grow: What Marketers Don’t Know. Oxford: Oxford University Press. ISBN 978‑0195573565.
- Sharp, B., Kennedy, R., & Nguyen, A. (2023). How Brands Grow Part 2: Emerging Markets, Services, Durables, and Luxury. Oxford: Oxford University Press. ISBN 978‑0190331252.
- Romaniuk, J., Sharp, B., & Ehrenberg‑Bass Institute. (2016). Building Distinctive Brand Assets. Adelaide: Ehrenberg‑Bass Institute for Marketing Science.