「しんじゃが、しんじゃ」。たぶん言いたかったのはそれだけだと思う。新じゃがという言葉は、意味よりも音が先に来る。口に出すと少し軽くて、春っぽくて、それだけで台所に立つ理由になる。
そもそも新じゃがは、品種の名前ではない。掘ってすぐ、寝かせずに出てきたじゃがいもをそう呼ぶ。水分が多く、皮が薄く、香りが青い。保存に向かない代わりに、今しか出ない性格をしている。だから料理も、完成度より速度と直感が合う。
まず作りたくなるのは、蒸してバターと塩だけのやつだ。皮ごと蒸して、湯気が落ち着いたところにバターを落とす。塩は少なめでいい。味というより、甘さの輪郭を立てる作業になる。これは料理というより確認に近い。
次は、丸ごと焼く。下茹でしてからオリーブオイルとニンニクで強めに焼くと、皮が割れて香りが出る。中はほろっと崩れるが、水っぽくならない。ローズマリーを入れてもいいが、入れすぎると新じゃがが引っ込む。あくまで主役は芋だ。
もう一つは、素揚げして塩。低温で火を通してから高温で仕上げると、皮がチップスになる。驚くほど軽く、甘い。ここまでくると「じゃがいも」という言葉が少しズレてくる。酒の横に置いても成立する。
結局、新じゃがは語感も含めて季節のイベントだ。「しんじゃが、しんじゃ」と言いながら、皮ごと火を入れる。それだけで十分ブログになるし、十分うまい。意味が先に来なくても、台所はちゃんと回り出す。
一番感な方法がいい。
フライパンで一気にやりたい
フライパンで一気にやるなら、蒸し焼き→仕上げバター塩が最短で一番うまい。洗った新じゃがを皮ごと入れ、水を大さじ2〜3、油は不要。フタをして中火で回し、蒸気が立ったら弱めて5〜8分、竹串が通ったら水分を飛ばす。
フタを外して火を中強に上げ、転がしながら表面を軽く乾かす。ここで焦がさない。表皮がマットになったら火止め、バターを落として余熱で溶かす。塩をひとつまみ振って完成だ。
このやり方が強い理由は、味を逃がさず工程を削れるから。茹でない、切らない、油で覆わない。皮の香りと甘さが直線で出る。フライパン一枚で、季節の芯に当たる。