ヨックモックミュージアムで見た、ピカソたちの陶芸

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RECORD / 2026

ピカソ、ミロ、バルセロ。3人の陶芸を見た日、息子は「自分だけの美術館」を作りました。

訪れたのは、表参道のヨックモックミュージアム。開催中の「ピカソ・ミロ・バルセロのセラミック―カタルーニャへの愛―」展です。

ピカソは器を顔や鳥に見立てました。ミロは土を建築や街へ広げました。バルセロは土地の土と手の跡を作品に残しました。

ヨックモックミュージアム「ピカソ・ミロ・バルセロのセラミック―カタルーニャへの愛―」展覧会ビジュアル

画像:ヨックモックミュージアム公式展覧会ページ

まずは、3人の違いが見える9作品から。

3人の陶芸を、まず9作品で見る

1人につき3作品、合計9点を並べました。代表作を決めるためではなく、3人が土をどう捉えたのかを比べるためです。

3人の違いは、器・場所・土地に表れる

ピカソは、皿や壺を別の生命に見立てます。ミロは、土と焼成の技術に線や色を重ね、陶芸を建築へ広げました。バルセロは、ひびや手の跡まで作品に残します。

3人とも一人で制作したわけではありません。ピカソにはマドゥーラ工房、ミロにはアルティガス父子、バルセロには各地の陶芸家がいました。発想と技術の間から作品が生まれています。

息子は「自分だけの美術館」を作っていた

息子は、石、粘土、針金を使い、オリジナルの美術館を作っていました。

石や粘土、針金を使って自分だけの美術館を制作するイベント会場

制作の途中でも、「どんな作品を作りたいのか」を自分の言葉で説明していました。石、粘土、針金を選び、手を止めずに形へ変えていきました。

ピカソは器の形から、別の生命を見つけた

1962年のパブロ・ピカソ

パブロ・ピカソ(1881〜1973)は、絵画だけでなく、彫刻、版画、舞台美術、陶芸まで表現の方法を変え続けた芸術家です。

写真:Revista Vea y Lea / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

丸い皿を顔にする。取っ手を耳にする。器の膨らみから、人や鳥の身体を見つける。ピカソは陶器を平らなキャンバスにせず、器が持つ形から別の存在を引き出しました。

1946年にヴァローリスを訪れ、翌年からマドゥーラ工房で本格的に制作しました。職人の粘土、釉薬、窯の技術と、ピカソの発想が出会っています。ピカソ美術館(パリ)の解説でも、ヴァローリスと陶芸が制作と生活の大きな部分だったことを確認できます。

化粧土を削って下の色を見せる掻き落としも、絵画の線を陶器へ持ち込む方法でした。ヨックモックミュージアムの解説と、焼成後の色を「見えないパレット」と表すバルセロナ・ピカソ美術館の解説を読むと、偶然も制作の一部だったことが見えてきます。

ヨックモックミュージアム館内に飾られたピカソ展のポスター

館内に飾られていたポスター。あざやかな顔が目を引きます。

館内のポスターは《Vallauris 1956 Exposition》

写真に写っていたのは、ピカソが南フランスの陶芸の町ヴァロリスで開かれた1956年の展覧会のために作った《Vallauris 1956 Exposition》です。

絵画をポスターへ転用したものではありません。ピカソ自身が展覧会のためにデザインしたカラー・リノカットです。赤、黄、青、紫、緑の強い色と、三つに分かれた顔が一つの画面に重なっています。写真では上部が切れていますが、作品全体には「VALLAURIS 1956」、下部には「EXPOSITION」と入っています。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)の所蔵記録では、技法はリノカット、寸法は99.1×65.4cm、刷りはヴァロリスのアルネラ工房、作品番号は337.1957と記録されています。作品全体の画像も同じページで確認できます。

別の現存作例については、サザビーズの作品記録に、アルネラ工房が刷り、ヴァロリス陶工協会が発行したこと、番号入り200部とは別のプルーフであることが記されています。

ミロは土を建築や街へ広げた

1935年、バルセロナで撮影されたジュアン・ミロ

ジュアン・ミロ(1893〜1983)は、星、鳥、女性を思わせる記号的な形と鮮やかな色で独自の世界を作りました。

写真:Carl Van Vechten / Library of Congress / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

1944年から陶芸家ジュゼップ・リュレンス・アルティガスと共同制作を始めます。アルティガスが土、釉薬、焼成を担い、ミロが形、色、記号的な線を持ち込みました。やがて陶板の壁画や床面へ進み、陶芸を建築や都市の一部へ広げていきます。ジュアン・ミロ財団の年譜でもその歩みを確認できます。

バルセロは土地と手で陶芸を変えた

2025年のミケル・バルセロ

ミケル・バルセロ(1957〜)は、絵画、彫刻、陶芸を行き来する現代作家です。

写真:Jindřich Nosek / Wikimedia CommonsCC BY 4.0

1994年から1995年ごろ、マリ滞在中に風と砂ぼこりで絵を描きにくくなり、身近な粘土でテラコッタを作り始めました。ひび、穴、崩れ、焼成中の偶然を生命の表現へ変えています。レイナ・ソフィア美術館も、マリでの試行錯誤を紹介しています。

2022年と2023年には信楽で陶芸家・古谷和也と共同制作をしました。古谷が作った壺を、土が乾かないうちにバルセロが押し、ひねり、別の形へ変えます。展覧会公式ページで《信楽の自画像》《頭の皮》《死者の舞》を確認できます。

「何を作りたいか」が残った

大きな窓と白いテーブルが並ぶヨックモックミュージアムのカフェ

大きな窓から光が入る、ミュージアム併設のカフェ。

展示がよかったので、帰りにミュージアムショップでTシャツと本を買いました。見たものを、身につけるものと本にして持ち帰りました。

ヨックモックミュージアムのカフェでシガールとアイスコーヒーを楽しむ様子

息子は、作りたいものを言葉にするのが上手だと、褒められていました。

迷わず作品へ変える集中力も、とてもよかったです。

楽しそうに土へ触れるピカソの姿を知り、いろいろな芸術に触れたことが、息子には刺激になったようでした。

「何を作ればいいのか」ではありません。「自分は何を作りたいのか」。

美術館を出ると大雨でした。びしょびしょになりながら、息子と表参道駅まで歩きました。作品を見たこと。息子が作品を作ったこと。夏の雨のなかを二人で歩いたこと。そんな一日でした。

ヨックモックミュージアムの展示情報

「ピカソ・ミロ・バルセロのセラミック―カタルーニャへの愛―」

  • 会場:ヨックモックミュージアム
  • 住所:東京都港区南青山6-15-1
  • 会期:2026年2月10日〜12月20日
  • 開館:10:00〜17:00
  • 休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)
  • 一般:1,400円
  • 大学生:1,000円
  • 高校生以下:無料

料金や開館日は変わる場合があります。訪問前に展覧会公式ページで最新情報を確認してください。

家族で博物館へ出かけた記録は、福井恐竜博物館へ家族で行った日の記事にもまとめています。

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