「もう一回遊びたい」は、機能をたくさん入れたときに生まれるのだと思っていました。
けれど、水元公園を参考にした鬼ごっこゲームをAIと作り、何度も動かして分かったのは少し違うことでした。
知っている景色の違和感を直す。逃げ方を自分で選べるようにする。簡単すぎたら、鬼を強くするだけではなく、隠れ方や乗り捨て方まで考え直す。
「もう一回」は、完成した機能の数ではなく、遊んだあとに残る「次はあっちへ逃げよう」から生まれます。
この記事は、ゲームが面白いと証明できた成功談ではありません。地図、逃げ方、難しさをどう組み直したか。そして、まだ何を確かめられていないかを残す制作記録です。
最初の地図は、知っている公園に見えなかった
最初の地形にも、水辺、橋、木、広場はありました。鬼ごっこを始めることもできました。
ただ、現地を知っている目で見ると「水元公園の中にいる感じ」が弱かった。要素は合っていても、場所同士の関係が違っていたからです。
そこで現行の公式園内図を見直し、中央広場とBBQ広場、水路沿いの園路、ポプラやメタセコイアの並木、橋、かわせみの里や水辺の生きもの館へ向かう道を作り直しました。
正確な縮尺で地図を写したわけではありません。公式画像をゲーム素材として使ったわけでもありません。場所同士の関係を読み取り、鬼ごっこで選べる道として圧縮して再構成しています。
地形の見た目と当たり判定も、同じ座標データから作るようにしました。画面では道に見えるのに通れない、地図では橋なのに水へ落ちる、というズレを減らすためです。
水には入れず、渡れるのは橋だけ。建物や木を通り抜けることもできません。自転車は速い代わりに幅があり、狭い場所では降りた方が進みやすくなります。
地図は背景ではなく、逃げ方を選ぶルールになりました。
速いだけでは、逃げ切れないようにした
最初は、走れば逃げられるゲームになっていました。これでは一度遊べば答えが分かってしまいます。
現在の速度は、徒歩7、鬼9.2、ダッシュ11.5、自転車16です。普通に歩くだけなら鬼の方が速い。ダッシュや自転車なら距離を取れますが、それだけでは逃走成功になりません。
木の陰へ入る。橋を渡る。水辺で進路を変える。自転車を途中で降り、細い道へ逃げる。
鬼はプレイヤーを見失うと、隠れた現在地を透視せず、最後に見た場所の周囲を探します。このルールを入れたことで、速さだけでなく「どこで姿を消すか」が遊びになりました。
自転車は最強の乗り物ではなく、途中で捨てられる道具にした
自転車は開始時に借りるかどうかを選びます。途中で都合よく何台も拾える仕組みにはしていません。
速いので広い園路では有利です。しかし、水際や木の間では車体の幅が邪魔になります。そこで、Qキーや画面のボタンで降りられるようにしました。降りた自転車はその場に残り、徒歩とダッシュへ切り替わります。
ここで面白かったのは、「自転車を追加した」ことより、「いつ捨てるか」という判断が生まれたことです。
便利な機能を足すだけでは、選択肢になりません。不利になる場面と、別の行動へ切り替える出口があって、初めて遊びになります。
「簡単すぎる」は、失敗ではなく次の設計条件だった
逃げ切るのが簡単すぎる状態もありました。
そこで鬼を速くし、木による視線遮蔽を調整し、短時間だけ姿を隠しても成功にならないようにしました。一方で、鬼が地形を無視して現在地を知る補正は入れていません。
強くしすぎれば理不尽になります。弱ければ、どこへ逃げても同じです。
調整では、最初の鬼を1体にする、出現直後から透視させない、木陰や橋に意味を持たせる、捕まっても同じ場所から戻れる、自転車・ダッシュ・徒歩を切り替えられる、という条件を守りました。
「危なかった」「次は橋へ行こう」と思える余地を残しながら、簡単な正解だけを消していきました。
AIに作ってもらったのではなく、違和感を言葉にして戻した
このゲームはAIを使って作っています。ただし、「鬼ごっこを作って」と頼んで完成したわけではありません。
画面を開く。動かす。知っている公園と違う場所を見つける。なぜ違うのかを言葉にする。地形や追跡のルールへ戻す。もう一度動かす。
この繰り返しでした。
テストでは、69件の単体確認に加え、PC、幅375px、幅320pxで実際に移動しました。水へ入らないか、橋を渡れるか、自転車を降りられるか、捕まったあとに戻れるか、横にはみ出さないかを確認しています。
ただし、テストが通ったことと、子どもが「もう一回」と言うことは同じではありません。子どもによる十分な試遊や、実機・4G回線での確認はまだできていません。
次に確かめたいのは、説明ではなく最初の1分
次の課題は、機能を増やすことではありません。
初めて遊ぶ人が、説明を読まなくても最初の1分で「危ない」「逃げられた」「別の道も試したい」と感じられるかを見たいと思っています。
もし迷うなら、案内を増やす前に景色を直す。簡単すぎるなら、数字を上げる前に選べる逃げ方を増やす。遊んでもらった言葉を、そのまま褒め言葉として受け取らず、次の設計条件へ戻す。
「もう一回」は、最後につける演出ではありません。
作る人が違和感をごまかさず、遊ぶ人の次の一手が残るまで直した結果なのだと思います。






