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宇宙船みたいなT2ファージをFPSにした。壁に隠れて進む『T2 PHAGE』の遊び方

公開日 · 更新日 · 9 MIN READ · 理解の記録

青緑の壁からのぞく白いT2ファージ風の模型。ゲームをイメージした生成画像で、実際のウイルス写真ではありません。
RECORD / 2026

多面体の頭に、細長い尾。下には、着陸船のように広がる細い脚。

T2ファージの形を見ていると、「これを自分で動かせたら面白そう」と思ってしまいます。そこで、T2ファージを主人公にした1人用のブラウザーゲーム「T2 PHAGE」を作りました。

スコープで狙い、少しだけ照準を合わせ、一撃で倒す。でも、相手も撃ってくる。壁の後ろへ戻り、また次の壁まで進む。そんな小さなFPSです。

T2 PHAGEで、狙って・隠れて・進んでみる

FPSは「自分の視点で遊ぶシューティングゲーム」のこと。この記事では先に遊び方を紹介し、そのあとに、この不思議なウイルスの話をします。

なお、ゲームの「歩く」「狙撃する」「悪玉菌が撃ち返す」は創作です。本物の感染を再現するシミュレーションではありません。そこを分けて見ると、ゲームもT2ファージも、どちらも面白くなります。

60秒。撃ち続けるより、隠れるタイミングが大切

目標は、制限時間60秒のあいだに、壁を使いながら奥の緑の出口へ進むこと。画面には「33m」と表示していますが、これはゲーム内の距離です。実際の微生物の大きさを表しているわけではありません。

敵は一発で倒れ、自分も一発受けるとその回は終了。敵を倒すと基本100点、連続で当てると加点が増え、出口に到達すると500点のボーナスがつきます。

大事なのは、壁が飾りではないこと。壁は敵の視線と弾を遮ります。同時に、こちらの弾も止めます。隠れたまま壁の向こうの敵を倒すことはできません。

最初は壁の後ろから始まります。右へ少し出て、相手が見えたら狙う。赤い射線や「狙われている」の表示が出たら、壁へ戻る。「撃つか、いったん引くか」を短い時間で選ぶゲームにしています。

公開ゲームで壁に隠れている場面。中央に遮蔽物、右下にファージ、左下に移動ボタン、右下に「狙う」ボタンが見える。

実際のゲーム画面①:手前の板が遮蔽物です。左上に「遮蔽中」と出ているあいだは、壁が敵の視線を遮っています。左下のボタンで壁の横へ出て、右下の「狙う」でスコープを開きます。

操作方法:1回押してスコープ、調整してもう1回

パソコンで遊ぶ

  • 移動:W・A・S・D。Wで前、Sで後ろ、AとDで左右へ移動します。左下の画面ボタンも使えます。
  • 見回す:画面をドラッグ。上下左右に視点を変えられます。
  • 狙う:「狙う」ボタン、画面のクリック、またはスペースキー。1回目はスコープをのぞくだけで、まだ発射しません。
  • 照準の微調整:ドラッグ、右側の上下左右ボタン、または矢印キー。
  • 撃つ:スコープ中に「撃つ」ボタン、クリック、またはスペースキーをもう1回。
  • スコープを戻す:「スコープを戻す」、Escキー、または右クリック。

矢印キーの役割だけは覚えておいてください。通常時は移動、スコープ中は照準の調整です。のぞきながら体を動かしたいときは、WASDか左下の移動ボタンを使います。

スマートフォンで遊ぶ

左下の矢印ボタンを押して移動し、画面をドラッグして見回します。右下の「狙う」をタップするとスコープになります。

スコープ中は右側の「照準を動かす」で上下左右に微調整できます。敵に照準を合わせたら「撃つ」をタップ。照準ボタンと発射ボタンを分けているので、狙いを直すつもりで弾を撃ってしまうのを避けられます。なお、ゲーム画面そのものを短くタップすると、狙う/撃つ操作になります。

音は最初はオフです。聞きたいときは右上の「音 OFF」を押してください。PCとスマホ幅で操作を確認していますが、端末によって3D表示の滑らかさは変わります。

公開ゲームのスコープ画面。円の中に敵と十字の照準があり、右側に上下左右の微調整ボタン、右下に「撃つ」が表示されている。

実際のゲーム画面②:スコープを開いたところ。この状態から、敵が中央の十字に重なるように照準を微調整します。右側の上下左右ボタンで狙いを直し、準備ができたら右下の「撃つ」。体を動かすボタンは左下に分かれています。

最初の一撃は「出る、狙う、戻る」で試してほしい

最初から出口まで急ぐより、まずは一体だけ倒して壁に戻ってみてください。

  1. 壁の右側へ少し出て、敵を見つける。
  2. スコープを開き、照準を少しずつ合わせる。
  3. 一発撃ったら、周囲を見て壁へ戻る。

発射後はスコープが外れ、短い待ち時間が入ります。連打で押し切るより、一発ごとに位置を変えるほうが、このゲームの感触が分かりやすいはずです。

「壁で弾が止まった」と出たら、狙いが悪いのではなく、射線に壁があります。少し横へ出て狙い直してください。逆に、敵の予告中に壁へ隠れれば、その敵の照準を切れます。すでに飛んできた弾まで消えるわけではないので、きちんと壁を間に入れるのが大切です。

歩いているあいだは、画面下の細い脚が交互に動きます。止まると脚も止まる。単に画面が移動するだけでなく、「この形のものを動かしている」と感じられるように加えた動きです。

本物のT2ファージは、細菌に感染するウイルス

ここからはゲームの外の話です。

バクテリオファージ、略してファージは、細菌に感染するウイルスです。T2はその一つ。研究用の微生物を扱うATCCでは、T2が感染・増殖する宿主として、大腸菌のB株を案内しています。ATCCのT2ファージ情報

ウイルスと細菌は同じものではありません。T2ファージは大腸菌の細胞を利用して増えます。「ウイルスが別の微生物に感染する」と考えると、少しイメージしやすくなります。

ただし、本物のT2が「悪い菌」を判断して選ぶわけではありません。感染できる相手かどうかは、細菌との相性に関わる話です。ゲームで使っている「悪玉菌」は敵の呼び名であって、T2が何でも退治してくれるという意味ではありません。

あの頭と脚には、ちゃんと役割がある

T2が属するT-evenの仲間には、T4やT6もいます。T4型ファージに特徴的なのが、少し縦長の多面体の頭、収縮する尾、そして基部から伸びる6本の長い尾繊維です。T4型ファージの頭部・尾部を比較した研究

頭は「カプシド」と呼ばれるタンパク質の殻で、T2ではその中にDNAが入っています。尾は、細菌の内部へDNAを送り込む過程に関わります。NCBI Bookshelf『Genomes』

脚のように見える部分は「尾繊維」。地面を歩くための脚ではなく、細菌への付着に関わる構造です。T2・T4の感染を電子顕微鏡で調べた研究では、尾の先の基盤が細胞への取り付きとDNAの通り道を作る過程で重要な役割を持つことが示されています。T2・T4の感染と基盤を調べた研究

T2ファージの模式図。頭のカプシドにはDNAが入り、尾の先に基盤と細菌への付着に関わる尾繊維がある。

図1:頭・尾・尾繊維を見分けるための模式図です。尾繊維は歩く脚ではありません。本文に挙げた構造研究を参考に再制作しており、色や縮尺は実物と異なります。

「宇宙船みたい」という見た目の面白さが、調べると「それぞれに仕事がある形」に変わる。ここが、ファージを見ていて飽きないところです。なお、ゲームの白い色や低ポリゴンの輪郭はデザインで、実際の色や分子の配置をそのまま写したものではありません。

本物は狙撃しない。細胞へDNAを送り込んで増える

T2の増え方は、ざっくり言うと「付着する → DNAを送り込む → 細胞内で新しいファージが作られる → 細胞が壊れて外へ出る」という流れです。こうした増え方を溶菌サイクルと呼びます。NCBI BookshelfのT2感染サイクルの説明

頭も尾も丸ごと細菌の中へ入る、という絵ではありません。細胞の外に残る構造と、中へ入るDNAを分けて考えると、仕組みの面白さが見えてきます。

T2の感染サイクルを4段階で示した図。細菌への付着、DNAの注入、細胞内で新しいファージが作られる段階、細胞が壊れて外へ出る段階。

図2:赤い線はファージのDNAを表しています。頭や尾が外に残り、DNAが細胞内へ入る関係を示しました。『Genomes』の説明を参考にした模式図で、ファージの数や経過時間、縮尺は再現していません。

遠くから弾を飛ばして一瞬で敵を消すゲームとは、かなり違います。ゲームでは「一発を当てる気持ちよさ」に置き換えましたが、本物は細菌の内部を利用して、自分の仲間を増やすウイルスです。なお、すべてのファージがまったく同じ経過をたどるわけではありません。

T2は、DNAが遺伝を担うことを探った実験にも登場する

T2は形だけでなく、科学史でも面白い存在です。

1952年、アルフレッド・ハーシーとマーサ・チェイスは、T2のDNAとタンパク質を別々の放射性同位体で標識し、感染時にどちらが細菌へ入るのかを調べました。DNA側にはリン32、タンパク質側には硫黄35を使った実験です。

感染後に外側の構造を振り落とすと、DNAの多くは細胞側に入り、硫黄を含むタンパク質の大部分は外側に残りました。この結果は、T2の遺伝情報を担うのがDNAであることを支持する重要な証拠になりました。ハーシーとチェイスの原著論文(1952年)

「変わった形のウイルスだな」と見ていたものが、遺伝の仕組みを探る研究につながっている。ゲームから入って、こんな話までたどり着けるのが楽しいところです。

作ってみて大事だったのは、撃つこと以外の手触り

制作の出発点は、「一度押すとスコープになり、微調整して撃つ。一撃で倒れる」という小さな遊びでした。

そこから、相手も撃ってくるようにして、壁に隠れる意味を加えました。さらに、スコープ中の上下左右ボタンと、移動に合わせて動く脚を追加しています。

照準を少し直して当てる。危なくなったら引く。移動すると脚が動く。大きな仕組みを増やす前に、まずはこの一つひとつを気持ちよくしたいと思っています。難易度や歩行の自然さは、これからも遊びながら調整したい部分です。

T2 PHAGEは、生物学を正確に操作する教材ではありません。でも「この主人公、実在するの?」という入口にはなれるかもしれません。

まずは一回、壁の横から狙ってみてください。遊んだあとに本物のT2ファージの形を見たら、あの細い尾繊維が少し違って見えるはずです。

T2 PHAGEで、最初の一体を狙ってみる

操作説明は2026年9月14日公開版をもとにしています。ゲーム画面①・②は公開版を実際に操作して撮影したスクリーンショットです。EYはゲームをイメージした生成画像、図1・図2は説明用の模式図で、電子顕微鏡写真ではありません。

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