好きは、偏っている。なぜ、この広告写真をいいと思ったのか

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好きは、偏っています。

Pinterestの「広告写真」ボードへ保存した10作品を見直すと、私が惹かれていたのは「余白の多い写真」ではありませんでした。顔の大写しも、大勢の人で埋まった広告もあります。

共通していたのは、静かな面と、力を集めた面の差です。主役は一つ。短い言葉は写真と同じ方向を向いています。

なぜ保存したのかを一枚ずつ言葉にすると、自分の好みが、次のEYとサイトデザインで使える判断基準へ変わりました。

ピノ ピスタチオは、余白より先に「一つの冗談」を置いている

森永乳業 ピノ ピスタチオ。ナダルさんの顔を中央に大きく置き、上部にピスタチオですっ。と書かれた広告
森永乳業「ピノ ピスタチオ」。出演はナダルさん。画像・企画背景:ブレーン

画面のほとんどを、ピスタチオ色とナダルさんの顔が占めています。広い空白はありません。それでも、ごちゃついて見えません。

理由は単純です。色はほぼ一色。主役は一人。大きな言葉も一つです。

上の「ピスタチオですっ。」を読み、白目をむいた表情を見て、手元の商品へ視線が落ちる。コピー、人物、商品が別の説明をしていません。全部が同じ冗談を支えています。

ブレーンの記事では、新商品の発売をニュースにするため、芸人ピスタチオの白目芸を使う案から企画が生まれたと説明されています。

ここから学べるのは「顔を大きくする」ことではありません。伝えたいことを一つに決めると、画面を大きく使っても静かに見えることです。

私がこの広告をいいと思った理由は、整っているからではありません。少しばかばかしい冗談を、色、顔、文字、商品まで迷わず一つにそろえているからです。きれいに収めるより、意図を強くする。その潔さに惹かれました。

近畿大学は、文字と写真を同じ意味にしている

火山の噴火口からマグロの頭が現れ、固定概念を、ぶっ壊す。と書かれた近畿大学の広告
近畿大学「固定概念を、ぶっ壊す。」(2014年)。画像・制作背景:広報会議

大きなコピーの下に、火山があります。噴火口から出ているのは溶岩ではなく、マグロです。

文字は「固定概念を、ぶっ壊す。」。写真も、火山という固定された風景をマグロが壊しています。

コピーと写真が同じ意味なので、説明文を先に読む必要がありません。小さな本文は後から読めばよい。最初の一秒では、大きな言葉と異様な写真だけで大学の姿勢が伝わります。

広報会議の取材によると、この広告は2014年に制作されました。受験生の頭にある大学の序列を壊したい、という近畿大学の課題が出発点です。制作は博報堂です。

余白は、文字を置くための残りではありません。大きな言葉と異様な写真を衝突させるための距離になっています。

私がこの広告を保存した理由は、写真だけでも、コピーだけでも終わらないからです。マグロを火山にする大胆さはあります。しかし、奇抜な写真を置いただけではありません。「壊す」という同じ動作を、写真と言葉で二度見せています。面白さの奥に、設計の強さがあります。

ポカリスエットは、青い面の中で大きさを比べさせる

大きなポカリスエットのボトルと安青錦関を並べ、汗かいて、人は強くなる。と縦に書いた広告
ポカリスエット「ポカリ、のまなきゃ。」篇。出演は安青錦関。画像・出演情報:ポカリスエット公式

薄い青の中に、巨大なボトル、安青錦関、縦書きのコピーがあります。要素は三つです。それぞれの間が広く、同じ大きさにそろっていません。

人より大きなボトルは現実にはありません。しかし、この誇張で「汗をかく人」と「水分を補うもの」が一目でつながります。

右端の言葉は三行です。二行以内という自分の基準から外れています。それでも読みにくくない。文字の周囲が静かで、一行が短いからです。

ここで大切なのは、行数を絶対の規則にしないことです。Webのファーストビューでは二行以内を基本にする。ただし、短い言葉を縦に刻む理由があるなら、写真との関係を見て判断します。

私がいいと思ったのは、要素の大きさがそろっていないところです。大きなボトル、人、細い縦書き。普通なら不安定になりそうな三つが、広い青の面でつながっています。全部を同じ強さに整えないから、見る順番が生まれています。

人が多くても、色が一つなら余白は生まれる

海に浮かぶ大勢の人が大きな人の形をつくったPOCARI HUMAN CHALLENGEの広告
ポカリスエット「POCARI HUMAN CHALLENGE」篇。画像・企画説明:ポカリスエット公式

人は多い。水しぶきも多い。それでも、画面の印象は「青」です。

海と服と商品色が一つにつながり、大勢の人が一つの人型になります。細部は密ですが、全体の形は単純です。

上半分では、小さな人々を囲む海が余白になります。下半分では、密集した表情の上に白いロゴが置かれています。同じ広告の中で、引きと寄り、静けさと熱量を反転させています。

余白は白い場所だけではありません。同じ色が広く続き、視線が休めるなら、そこは余白として働きます。

この広告を選んだことで、自分は「物が少ない写真」だけを好きなのではないと分かりました。人が多くても、一つの色と一つの形へまとまっていれば美しい。細部の多さより、全体が一つに見えるかを気にしています。

無印良品は、地平線だけで思想を見せている

空と大地の地平線を大きく写した無印良品の2003年企業広告
無印良品、2003年の地平線広告。画像・解説:無印良品「原研哉 Visualize the philosophy of MUJI」

写っているのは、地球と人間だけです。商品を大きく見せず、空と大地の境界を画面の主役にしています。

無印良品の解説で原研哉さんは、この2003年の新聞広告を、見る人が無印良品とは何かを自由に感じ取るためのビジュアルだったと話しています。

私がいいと思ったのは、余白がきれいだからだけではありません。説明を減らしたことで、見る人が考える場所まで画面の中につくられています。

余白は、情報が足りない状態ではない。解釈を受け入れる器にもなる。この広告は、その基準を最も静かに見せています。

長崎バスは、窓の向こうに一日の時間を残している

長崎バスの運転士を窓越しに捉え、名もなき一日を走ると添えた企業広告
長崎自動車「長崎バス」企業広告。画像・作品評:宣伝会議

運転士の顔は中央にありますが、窓枠と青い反射が大きく入り、人物を説明しすぎません。短い言葉も、目立つ場所ではなく窓の暗部へ小さく置かれています。

宣伝会議の記事では、この一連のポスターを、長崎を流れる時間と、そこに生まれた余白と余韻が美しい広告として紹介しています。

私が惹かれたのは、働く人を英雄のように強調していないところです。窓越しの距離があるから、日常をそっと見つけた写真に見えます。

人物を大きく見せることと、人物を強く感じさせることは別です。少し遠くから見ることで、画面に時間が残ります。

カロリーメイトゼリーは、視線の先を文字の場所にしている

畳に横たわる清野菜名さんと、右側の明るい余白に青いコピーを置いたカロリーメイトゼリーの広告
大塚製薬「カロリーメイト ゼリー」ポスター(2016年)。出演:清野菜名さん、撮影:市橋織江さん。画像・制作情報:ブレーン

清野菜名さんは画面の左下に寝転び、顔だけをこちらへ向けています。右半分には畳の明るい面が広がり、青いコピーが小さく浮いています。

ブレーンの記事によると、2016年のポスターで、撮影は市橋織江さん。夏へ向かう女性の気持ちを、清野菜名さんの表情と写真で描いた作品です。

私がいいと思ったのは、人物と文字を離しているのに、関係が切れていないところです。顔の向きと明るい畳の流れが、自然にコピーへ視線を運びます。

空いた場所へ文字を置くのではなく、人物の視線や姿勢がつくった場所へ置く。余白が動線になる例です。

クロレッツは、説明を消して形だけを残した

白い面の中央に緑の抽象図形を大きく置き、左下にクロレッツの商品だけを添えた広告
クロレッツ「味を図形化した広告」(2017年)。アートディレクション:相楽賢太郎さん。画像・制作背景:ブレーン

中央には緑の図形、左下には商品。それ以外の説明はありません。何の形なのか分からないから、目が止まります。

ブレーンの取材では、約130人の投票から味に合う形を選び、言葉で意味を限定しないため、完成した広告からコピーを外したと説明されています。

私が惹かれた理由は、言葉を短くしたのではなく、必要がないと判断して消したことです。文字を置かない勇気が、図形の存在感を最大にしています。

「二行以内」は、二行書くという意味ではありません。写真や形だけで届くなら、ゼロ行も選べます。

パンテーンは、文字の量を一つの形へまとめている

千人を超える就活生の言葉を集め、ひっつめ髪の女性の横顔と大きなコピーを形づくったパンテーンの新聞広告
パンテーン「#1000人の就活生のホンネ」(2018年)。画像・制作情報:ブレーン

この広告は文字だらけです。それでも散らかって見えません。小さな声の集積が、女性の横顔と大きなコピーという二つの形にまとまっているからです。

ブレーンの記事によると、1000人を超える就活生から寄せられた声で構成されたグラフィックです。2018年に新聞広告とテレビCMで展開されました。

私がいいと思ったのは、多さを隠さず、多さそのものを意味に変えているところです。余白を増やす代わりに、細かな文字を一つの輪郭へ収束させています。

情報量を減らせないときは、ばらばらに置かない。遠くから見たときに一つの形へ見えるようまとめる。これは、密度の高い画面を美しくする別の方法です。

キッコーマンは、野菜を花束へ変えて日常を持ち上げる

色鮮やかな野菜を花束のように束ねたキッコーマンの企業広告
キッコーマン「野菜としょうゆは人を讃える。花束のように。」(2015年)。画像・作品情報:キッコーマン「おいしい記憶」

野菜は料理の材料です。しかし、この広告では花束として立ち上がっています。日常にあるものを、祝うための形へ変えています。

色は多いのに、散らかって見えません。野菜が一つの束へ集まり、その周囲に静かな面があるからです。

私がいいと思ったのは、豪華なものを足さず、見方だけを変えているところです。普通のものを特別に見せるには、飾りを増やす必要はない。集め方と見立てで、意味は変わります。

サイトデザインにも使えます。小さな情報をカードとして散らすより、一つの目的で束ねたほうが強い。数を減らせないときは、まとまり方を変えます。

10作品を、自分ならどう作るか

元広告の人物、商品、ロゴ、コピーは再現していません。自分が惹かれた原理だけを、別の題材で試しました。

不快に感じる人や、元広告の模倣だと誤解する人が出ないよう、生成例は小さな折りたたみ欄へ置きます。

小さな裏実験を見る:10のプロンプトと生成例
黄緑一色の衣装と渦巻きオブジェを使った生成例
1.全部を一つの冗談へそろえる
明るい黄緑の一色世界。架空モデル一人と渦巻きオブジェ一つ。表情、色、小物を一つの冗談にそろえる。ロゴ、実在人物、既存広告の模倣は禁止。
白い紙をオレンジの球が破る生成例
2.写真と意味を同じ動作にする
白い紙の壁をオレンジの球が突き破る瞬間。主役は衝突点一つ。広い白を残す。火山、魚、既存コピーは使わない。
巨大な黄色い傘と小さなランナーを対比した生成例
3.大きさをそろえず、読む順番をつくる
青い広場に巨大な黄色い傘、小さなランナー、細い白い帯。三つの大きさを極端に変える。要素を同じ強さにしない。
多数の紙クリップを一羽の鳥へまとめた生成例
4.細部が多くても、一つの形に見せる
青い紙クリップと小さな紙片を数百個使い、一羽の鳥の輪郭へ集める。輪郭の外は静かにする。遠目では一つ、近くでは多数に見せる。
広い塩原と小さな人物だけを写した生成例
5.説明ではなく、考える場所を残す
淡い塩原と空、遠くの人物一人だけ。地平線を低く置き、画面の大半を静かな面にする。観光写真らしい演出や夕焼けは禁止。
朝のパン職人を窓越しに捉えた生成例
6.少し遠くから見て、時間を残す
明け方のパン屋を外から窓越しに撮る。職人は目立たせすぎず、青い反射と窓枠を大きく入れる。カメラ目線は禁止。
人物の視線の先へ赤い紙飛行機を置いた生成例
7.空きではなく、視線の先を使う
黄色い面の左下に青い服の架空モデル。視線の先へ赤い紙飛行機を一つ置く。顔、体、紙飛行機を一本の斜線でつなぐ。
赤いリボン状の立体だけを置いた生成例
8.説明を消し、一つの形へ任せる
白い空間に、意味を決めきれない赤いリボン状の立体を一つ。商品、人物、文字を置かない。素材と影だけで目を止める。
小さな手書き線を花の輪郭へまとめた生成例
9.小さな声を、大きな輪郭へまとめる
読めないほど短い手書き線を数百個集め、大きな花の輪郭をつくる。文章として読ませず、遠くから一つの形に見せる。
文房具を花束のように束ねた生成例
10.日用品を、祝う形へ持ち上げる
鉛筆、定規、クリップ、赤い糸を、整った花束のように束ねる。文房具店のカタログにはせず、周囲へ広い静かな面を残す。

私の好みは、余白ではなく「力の偏り」だった

選んだ広告には、広い空もあれば、顔の大写しもあります。人が一人の広告も、大勢いる広告もあります。

「なぜいいと思ったのか」を言葉にすると、共通点は次の五つでした。

  1. 最初に見る主役が一つある
  2. 写真とコピーが別の話をしない
  3. 静かな面と密な面の差が大きい
  4. 文字は空きへ置くのではなく、視線の流れへ置く
  5. 小さな説明は、主役を見たあとに読ませる

10作品を通して、もう一つ分かりました。私は「要素が少ない画面」が好きなのではありません。遠くから一つに見え、近づくと細部が見える画面が好きです。

私は、整然と並んだだけのデザインより、主役へ力が偏っている画面を選んでいました。静かですが、弱くはありません。余白の隣に、強い顔、異様な写真、大きな商品、動く人物があります。

「余白を増やす」は、まだ表面的な言葉でした。

本当に磨きたいのは、どこを静かにして、どこへ力を集めるかを判断する目です。

次にデザインするときは、一画面一主役から始めます。文字は原則二行以内。写真の比率を守る。飾りを足す前に、色面と配置だけで視線が流れるかを見る。

余白は、何もない場所ではありません。主役を主役にするための、いちばん大きな要素です。

EYでは、明るい写真の中に一つの偏りをつくる

EYへ持ち込みたいのは、広告の見た目ではなく判断です。

  • 最初に見る主役を一つにする
  • 写真と文字に同じ動作をさせる
  • 静かな色面と、密度の高い場所を隣り合わせる
  • 文字は空いている場所ではなく、人物の視線や動きの先へ置く
  • 情報が多いときは、遠くから一つの形に見せる
  • きれいに整えすぎず、大きさ、切れ、重なりのどれか一つを偏らせる

私の好みをEY用の指示にすると、次の形になります。

明るい高予算の実写広告写真。最初に見る主役は一つ。画面の半分以上を静かな色面として残し、残りへ人物、物、短い日本語を集中させる。写真とコピーは同じ動作、感情、方向を示す。文字は空きへ置かず、視線、手、身体、物の動きの先へ置く。色は主色一つ、補助色一つ、強い差し色一つ。要素を均等に並べない。大きさ、切れ、重なりのどれか一つを大胆にする。明るいのに少し引っかかる画面にする。実在人物、既存広告、ブランド、ロゴの模倣は禁止。

サイトでは、余白より先に主役とまとまりを決める

サイトへそのまま広告の派手さを持ち込む必要はありません。使うのは同じ判断です。

一画面の主役は一つ。カードの数が多いなら、目的ごとに一つの塊へまとめます。見出し、画像、ボタンを同じ強さにしません。次に押してほしい場所だけ密度を上げます。

余白を増やす前に、何を一つに見せるかを決める。私が好きな広告から、サイトへ移せるのはこの順番でした。

参照元

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