難しい問題は、分解し続けるだけでは解けません。
時間を固定し、複数の解法を同じ条件で走らせる。完成したもの、使える部品、停止する方法に分ける。勝った部分だけを次の実験へ運ぶ。
この方法を、ひとまず「時間対効果LOOP」と呼ぶことにしました。

トリケラトプスを3Dで動かす問題で止まった
最初のゴールは「トリケラトプスを3Dで動かしたい」でした。
そこで3Dモデル、骨格、脚、歩行、描画を順番に作ろうとしました。しかし、問題を細かくするほど、本当の目的から離れていきます。
本当にやりたかったのは、3D制作そのものではありません。
トリケラトプスを動かして遊ぶこと。
目的と手段が同じゴールに入っていたため、手段が難しくなるとプロジェクト全体が止まっていました。
トリケラトプスの骨格や歩行そのものは、以前の トリケラトプはどう動いた? で整理しています。今回は、それを完成させる方法ではなく、止まった問題の解き方を実験しました。
同じ1時間で「遊び先行」と「3D先行」を走らせた
解き方を2つに分けました。
- A:まず動かして遊べるものを作る
- B:まず3D表現を作る
条件は同じです。
- 上限は1時間
- 同じ資料と過去データを使う
- 人間は途中で介入しない
- 前進、左右、停止、リセットを完了条件にする
- 動作確認と未確認を残す
Aは約12分で完了しました。2D表現ですが、PCと375px、前進、方向転換、停止、リセット、61秒の連続歩行まで確認できました。
Bは2分17秒で3D表現を実装しました。ただし、PC、375px、60秒歩行の確認が残りました。速かったけれど、完了の証拠が足りません。
ここで「速い方が勝ち」にしないことが重要でした。
20分の2周目で「完成、部品、停止」に分けた
次は20分を上限にし、3つの改善案を並行しました。
- 小さな目標:草を3つ順番に見つける
- 詰まり救済:境界で停まったら自動旋回する
- 3D報酬:一定時間歩いたら3Dを開く
小さな目標は、同じ移動ルールの自動テストで4.32秒に3つ完了しました。これを採用候補にしました。
詰まり救済は、0.8秒の停滞を検出して0.82ラジアン旋回し、歩行を再開できました。これは丸ごとの勝者ではなく、後で使える部品です。
3D報酬は不採用にしました。画面端で実際に動いていなくても、「歩行中」の状態だけで時間が加算されたからです。
失敗した案を成功扱いせず、止められた。
これも実験の成果です。
時間対効果LOOPは7段階で回す
- 守りたい目的を1文で決める
- 共通の材料と完了条件を固定する
10分 / 20分 / 1時間など、各解法の上限を同じにする- 異なる解法を、途中の人間介入なしで走らせる
- 終了時に、完成物、証拠、未確認、失敗を残す
採用 / 部品として再利用 / 停止に分ける- 勝った方法と未解決の弱点だけを次の時間枠へ運ぶ
2周続けて新しい証拠が増えない場合は、分解を止めます。その時点で、ゴール、手段、時間、必要な情報を決め直します。
時間は締切ではなく実験条件になる
アジャイル開発では、タイムボックスは以前から使われています。PMI日本支部が公開しているAI・データサイエンスプロジェクトのプレイブックでも、不確実な調査をタイムボックス化するスパイクストーリーが紹介されています(PMI日本支部「データサイエンス/AIプロジェクト プレイブック」)。
GoogleのAIコードレビューアシスタントのCodelabにも、修正、テスト、検証を反復し、各周回の時間と結果を比較する考え方が出てきます(Google Codelabs「Google ADKを使用して本番環境のAIコードレビューアシスタントを構築する」)。
私が今回追加したのは、時間を短く切ることだけではありません。
- 同条件の複数解法を競わせる
- 完成だけでなく、使える部品を回収する
- 証拠が弱い速さを勝ちにしない
- 不採用を明記して、同じ失敗を次周へ運ばない
時間と成果を、1つの数字に押し込めないことも重要です。
時間対効果LOOPの依頼文
次の形なら、コード、記事、デザインのどれでも試せます。
目的:
<最後に起きてほしいこと>
共通条件:
<使う材料、元データ、完了条件>
解法:
A. <解き方1>
B. <解き方2>
時間:
各<10分 / 20分 / 1時間>
人間介入:
なし
終了時に残すもの:
完成物 / 動作証拠 / 未確認 / 失敗 / 再利用できる部品
判定:
採用 / 部品として再利用 / 停止
「プロンプトを1回うまく書く」から、「検証結果が次へ戻る仕組みを作る」へ進む場合は、AI時代はプロンプトよりループで回る仕組みを作る も続きとして読めます。
最初の勝ち筋を30分で見つける方法は、AIと話す30分で勝ち筋を見つける にまとめています。
今回の結論は「小さな完成から次へ運ぶ」
トリケラトプスの実験では、最初から3Dの完成を固定すると止まりました。
しかし、「動かして遊ぶ」に戻し、同じ時間で解法を競わせると、次に運べるものが残りました。
- 草を3つ追う小さな遊び
- 詰まったときの自動復帰
- 3D化は「時間」ではなく「小目標の完了」の後へ置く
難問にぶつかったとき、さらに細かく分解する前に、同じ時間枠で別の解き方を走らせてみる。
解けなかった方法からも、部品と停止理由は回収できます。
時間を無駄にしないとは、すべてを完成させることではありません。次の判断に運べる証拠を残すことです。






