AIに作らせる前にGrill Me、作った後にcode-review。2つのSkillの使い分け

公開日 · 更新日 · 12 MIN READ · 理解の記録

RECORD / 2026

AIにコードを書いてもらうとき、いきなり「これを作って」と頼んでいませんか?

その方法でもコードは出てきます。ただし、完成してから「思っていたものと違う」と気づくことがあります。

Matt Pocockさんの/grill-me/code-reviewは、この問題を前後から支えるSkillです。さらに、Codexや作業環境そのものが正常かを確認する/doctorもあります。

  • 作る前:/grill-meで、考えを質問によってはっきりさせる
  • 作った後:/code-reviewで、変更が正しく作られ、要求どおりか確認する
  • 環境が怪しいとき:/doctorで、CodexやSkillの状態を診断する

この記事では、3つのSkillの違いと、どんな場面で使うべきかを紹介します。

Matt Pocockとは

Matt Pocockさんは、TypeScriptを中心に活動してきた教育者・コンテンツクリエイター・エンジニアです。本人のプロフィールでは、元ボイスコーチ、Vercel勤務を経て、現在はAIエンジニアリングを教えていると紹介されています。

Total TypeScriptの公式サイトでは、XStateのコアチーム、VercelのDeveloper Advocate、リード・フルスタック開発者、ライブラリメンテナーを経験したことが説明されています。TypeScriptを深く学ぶための教材を作り、オープンソースのメンテナーや業界の専門家の知見を、実践的な演習で学べる形にしてきた人物です。

現在はAI Heroを通じて、Web開発者がAIエンジニアリングを学ぶための教育にも取り組んでいます。今回紹介する/grill-me/code-review/doctorは、単なる便利コマンドではなく、こうした開発者教育の考え方をAIとの開発手順に落とし込んだSkillとして見ると理解しやすくなります。

Matt Pocockさんの公式プロフィール写真

画像出典:Matt Pocock公式プロフィール

Grill Meで人間とAIが作るものを相談しているイラスト

`/grill-me`は、作る前に考えを深掘りするSkill

/grill-meは、まだ固まっていないアイデアを質問で掘り下げるSkillです。

AIがすぐに実装を始めるのではなく、複数回の質問を通して、目的、対象ユーザー、範囲、例外、完了条件を整理します。

公式の説明では、何かを始める前にアイデアの認識を合わせ、決断できる状態まで質問するSkillとされています。リポジトリにファイルを書き残すタイプではなく、会話の中で考えを明確にする、ステートレスなSkillです。

`/grill-me`が実際にすること

/grill-meは、最初から完成した計画を出すSkillではありません。質問と回答を何ラウンドか繰り返し、暗黙の前提を減らしていきます。

  1. まず「記事に検索機能を付けたい」のような、粗いアイデアを受け取る
  2. その時点で前提がそろっている質問をまとめて出す
  3. 回答をもとに、次の判断に必要な質問へ進む
  4. 目的、範囲、例外、完了条件を説明できる状態で終わる

この「その時点で聞ける質問のまとまり」を、公式説明ではfrontierと呼んでいます。前の回答に依存する質問を先走って聞かないため、質問が一つずつ延々と続く形になりにくいのが特徴です。

ただし、質問に答えればすべて決められるわけではありません。「画面は1枚と3枚のどちらがよいか」「操作感をどうするか」のように、実物を見ないと判断できない問題もあります。その場合は、質問を続けるのではなく、簡単な試作品を作ってから/grill-meに戻ります。

また、これは面接ではなく会話です。AIの質問にすべて「はい」と答えるのではなく、前提が違えば反論し、「わからない」ならそう答えます。良い結果の目安は、質問の数が多いことではなく、自分が各判断の理由を説明できることです。

使うべき場面

次のような状態なら、/grill-meを使う価値があります。

  • 新しい機能を作りたいが、何を作るか曖昧
  • 「もっと使いやすく」「いい感じにしたい」としか言えない
  • 作る前に、対象ユーザーや範囲を決めたい
  • AIが毎回、勝手に機能を広げてしまう
  • 新しい記事、サービス、画面の方向性を整理したい
  • 開発途中で時間がかかりすぎている、または迷走している

コードの話でなくても使えます。記事の企画、仕事の進め方、サービス案など、「考えが頭の中にあるけれど、まだ説明できないもの」に向いています。

/grill-meは、作る前だけのSkillではありません。開発途中で「なぜこんなに時間がかかっているのか」「何を作っているのか分からなくなった」と感じたときにも使えます。いったん実装を止めて、目的、範囲、優先順位、不要な機能、完了条件を質問で整理します。作りすぎや迷走に気づきやすくなるため、私は特におすすめしたいSkillです。

`/grill-me`の使い方

Skillをインストールします。

npx skills@latest add mattpocock/skills --skill=grill-me

新しい会話で、次のように入力します。

/grill-me

すでにAIが作った計画の上に重ねるより、何も決まっていない新しい会話で始めるほうが、/grill-meの役割を活かせます。目的が明確な小さな修正なら、無理に使う必要はありません。

続けて、作りたいものを自然な言葉で説明します。

読者が記事を読んだあと、実際にAI Skillを試せるページを作りたい。

質問には、正解らしい答えを無理に返す必要はありません。「わからない」と答えることも有効です。答えられない問題は、先にプロトタイプを作って見てから決めるべき場合があります。

`/code-review`は、作った後の変更を2方向から見るSkill

/code-reviewは、コードの差分をレビューするSkillです。

特徴は、レビューを次の2軸に分けることです。

  • Standards:このリポジトリの書き方、規約、設計の考え方に合っているか
  • Spec:Issueや仕様書に書かれた要求を正しく満たしているか

つまり、次の2つを別々に確認します。

  • 正しく作られているか
  • 正しいものを作ったか

たとえば、コードの書き方はプロジェクトの規約に合っていても、仕様と違う機能を作っているかもしれません。逆に、仕様どおりでも、既存の設計ルールを壊しているかもしれません。

この2つを一つの評価に混ぜないことが、/code-reviewの重要な考え方です。

コードの差分を規約と仕様の2方向から確認するイラスト

使うべき場面

次のような状態で使います。

  • ブランチやPull Requestに差分がある
  • AIに実装させた変更を確認したい
  • Issueの要求が抜けなく実装されているか知りたい
  • 既存プロジェクトの作法に違反していないか確認したい
  • マージ前に、独立したレビューを入れたい

ただし、/code-reviewは万能なバグ探しではありません。null参照、競合、境界値などを重点的に探したい場合は、別のバグレビューやテストも必要です。

`/doctor`は、AI開発環境を診断するSkill

/doctorは、コードや計画ではなく、Codexそのものとプロジェクトの作業環境を点検するSkillです。

PATH上のCodex、設定、認証状態、Git、ターミナル、スレッド、Skill、MCP、Plugin、Hook、AGENTS.md、権限、サンドボックスなどを確認し、PASSWARNFAILに分けて報告します。通常は読み取り専用の診断です。

使うべき場面

  • Codexが急に動かない、または動作が不安定
  • Skill、MCP、Plugin、Hookの重複や衝突が疑わしい
  • PATHに複数のCodexがありそう
  • AGENTS.mdや設定が効いているか分からない
  • 実装や公開の前に、作業環境を点検したい

入力はシンプルです。

/doctor

ここで大切なのは、Skillを認識できたことと、診断が成功したことは別だという点です。/doctorはコードレビューや要件整理をしません。また、設定・認証・権限を勝手に修正するSkillでもありません。修正やクリーンアップは、内容を確認してから明示的に依頼します。

3つを使う順番

基本の流れは次のとおりです。

作業環境が怪しい
  ↓
/doctor でCodex・Skill・設定を診断する
  ↓
アイデア
  ↓
/grill-me で目的・範囲・完了条件を決める
  ↓
実装する
  ↓
コミットする
  ↓
/code-review で規約と仕様を別々に確認する

/doctorは毎回必須ではありません。環境の問題がなさそうなら、/grill-meから始めます。逆に、Skillが動かない状態で計画やレビューを続けるなら、先に/doctorで土台を確認します。

例:読者向けの検索機能を作る場合

最初の依頼が、次のようなものだったとします。

記事を検索できる機能を追加したい。

このまま実装すると、AIは検索対象、検索結果の件数、空結果の表示、スマホ画面、URLの扱いなどを推測するかもしれません。

そこで、まず/grill-meを使います。

質問を通して、次のような条件を決めます。

  • 検索対象はタイトルだけか、本文も含むか
  • 結果が0件のときに何を表示するか
  • 検索結果は何件まで表示するか
  • 検索URLを共有できるようにするか
  • 既存の記事URLや表示を変えないか
  • 完了と判断するためのテストは何か

条件が固まったら実装します。

実装後に/code-reviewを使うと、次のような確認ができます。

Standards側の確認

  • 既存の検索処理やコンポーネントを再利用しているか
  • 命名やファイル配置がプロジェクトの規約に合っているか
  • 同じ処理を重複して書いていないか
  • 不要な抽象化や設定を追加していないか

Spec側の確認

  • タイトルと本文の両方を検索できるか
  • 0件の表示が仕様どおりか
  • スマホでも検索できるか
  • 既存URLを壊していないか
  • 完了条件のテストが実装されているか

このように、環境診断・作る前・作った後で役割を分けます。

どのSkillを使うべきか迷ったとき

  • 何を作るか決まっていない:/grill-me
  • 仕様は決まっていて、まだ実装していない:通常の実装フロー。必要ならTDD
  • コードを書いたが、要求を満たすか不安:/code-review
  • CodexやSkillの動作、設定、接続が怪しい:/doctor
  • リポジトリ固有の用語や設計も整理したい:/grill-with-docs
  • 1回の会話に収まらない大きな計画:/wayfinderなど別の計画Skill

すでに作るものが明確なら、/grill-meを使う必要はありません。逆に、目的が曖昧なまま実装を始めるなら、先に質問の時間を作ったほうが安全です。

注意点

`/grill-me`は、質問されるだけでは効果がない

質問にすべて「はい」と答えているだけでは、AIが作った計画を追認しているだけになります。

途中で反対したり、「その前提は違う」と伝えたりすることが重要です。Grill Meは人間の代わりに決めるSkillではなく、人間が決めるための質問役です。

`/code-review`は、レビュー対象を指定する

/code-reviewは、比較する基準点を必要とします。main、特定のコミット、HEAD~5など、どこからの差分を見るかを指定します。

また、未コミットの作業ツリーは対象になりません。実装した変更をコミットしてからレビューする必要があります。

仕様書が見つからない場合、Spec側は要件を勝手に推測せず、「仕様がない」と報告します。これは弱点ではなく、存在しない要求をAIが発明しないための安全策です。

AIの指摘は、そのまま証拠にはなりません。指摘された行、規約、仕様の箇所を人間が確認してから修正します。

作る前はGrill Me、作った後はcode-review、環境はdoctor

/grill-me/code-review/doctorは、確認する対象が違います。

  • /grill-me:作る前に、考えを質問で明確にする
  • /code-review:作った後に、規約と仕様を分けて確認する
  • /doctor:作業環境や設定の問題を診断する

AI開発で起きやすい失敗は、「曖昧な依頼のまま作り始めること」と「完成したコードを一つの視点だけで確認すること」です。

そのため、次の使い分けがわかりやすいです。

> 環境が怪しければdoctor。作る前はGrill Me。作った後はcode-review。

この3つを使い分けると、AIに丸投げするのではなく、環境・目的・成果物のそれぞれに人間の判断を残せます。

公式ページ:

3件のコメント

  1. Skillを増やせば必ず速くなるわけではありません。目的が明確な小さな修正までGrill Meにかけると、質問そのものが負担になる場合があります。

  2. この記事の3つのSkillは、目的・環境・成果物を分担して確認します。/doctorで環境、/grill-meで目的、/code-reviewで完成物を見る流れです。

  3. /grill-meは作る前だけでなく、開発途中で迷走したときにも使えます。時間がかかりすぎていると感じたら、いったん実装を止めて目的を整理するのがおすすめです。

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